第46話   庄内フカセ釣法とオキアミ   平成15年10月12日  

庄内フカセ釣法は、エビを使い庄内竿で釣る完全フカセ釣法である。庄内竿は庄内フカセ釣法を行う上でなくてはならない竿であった。完全フカセ釣法と云っても技をマスターした者のみが出来るのであって、そこまで行かない普通の人は技量に応じ以前は板錘りが主流であったのであったが、ここ2030年前から極小か小のカミツブシを付けている。

庄内竿は完全フカセ釣をする為に生まれてきたような竿である。少しでも遠くに飛ばす為にバカを2〜3尋と長く取り、金属は釣針のみと云った極々シンプルな仕掛けである。潮を読み、ハケを読み、多少の風など関係なく自分がここぞと思うポイントに投入し、糸フケを出さず生きエビを自然に漂わす。熟練を要するが、細身の元又は胴調子の庄内竿だからこそ其の振込みが可能であった。

昭和40年代後半に入ると軽くて丈夫で手入れのあまり要らないカーボンの竿が登場した。同じ頃安価なオキアミが庄内にも入って来た。生きエビは高価なので自然に安価でコマセにも使用出来るオキアミを使うようになって行った。庄内竿の欠点は、カーボンに比べ釣っては非常に面白いのではあるが、数段重い事と手入れが必要だ。また、庄内竿の長竿を一日中竿を振っていては、次の日の仕事が出来ないほどに疲れる。そこで、値段は高い(其の当時はカーボンの方が高価)が、カーボンの比較的軟らかいヘラ竿(長竿には鮎竿)を中通しに改造して使うのが普及した。しかし、庄内竿の竹本来のしなりと弾力が足りない。特に風のある日などはオキアミを付けて思い切り振り込むとオキアミが飛んでしまうのである。そこでバカを3尋程取っていたのを1尋位に短くし、逆に竿をその分長くするようにと変わって行ったのである。庄内竿の黒鯛釣りの竿は7m前後であったものが、8〜10mに長くなってしまったのである。餌が竿を変えてしまったのであった。

又オキアミが安価であった為に急激に普及し撒餌として使われ、大量に撒かれ始めると沖の潮溜まりに黒鯛が集まることが多くなり、岸に寄る事がめっきりと少なくなって来たのである。闇雲に撒餌を投入する潮を読めない素人の釣人が急激に増えてきたことに起因している。この頃から、短い竿で大物を上げる事がめっきりと少なくなって来た。それでますます長竿が必要とされるようになった。

庄内で黒鯛が少なくなると庄内の伝統釣法と8〜10mの長竿をひっさげて、初冬の男鹿を開拓し、男鹿に黒鯛少なくなると今度は佐渡を開拓した。男鹿での一頃の賑わいは釣り場の車が10台あれば少なくとも89台でが庄内ナンバーであったし、殊に121月の休日には小型バスを借りて会社ぐるみで出かける事も多かった程で男鹿の黒鯛が居なくなると顰蹙(ひんしゅく)を買ったほどの賑わいであった。